静岡県浜松市は天竜美林と呼ばれる良質なスギ・ヒノキの産地として知られています。
昨今のウッドショックにより海外からの輸入木材が品薄になり、再び国内の木材に注目が集まっています。
大池建具店でも最も頻繁に使用する木材は国産のスギとヒノキですが、今日書いていこうと思うのは広葉樹のお話。
東京オリンピック、またその先の継続的な需要に向けて浜松市のバックアップを受けて天竜美林(スギ・ヒノキ)は生産されています。その陰でひっそりと今もってあまり見向きもされていないのが同じ山、付近の山に植えられた桜や栗などの広葉樹。人間の手によってわざわざ植林、或いは自然に生えていたものを間引くなどして手入れされたものです。
そもそもこの広葉樹たちはどうして山に植えられたのでしょう?
それには昔ながらの林業のサイクルに関係しています。スギ・ヒノキの苗木を山に植林してから木材になるまで何年かかるでしょう?一般的にスギは30~60年、ヒノキに至ってはさらに長く40~100年かかるといわれています!昔から植林は「孫の代のために植える」と表現されたりもしますが言いえて妙ですね。しかしながら針葉樹と孫が大きくなるまで待ちぼうけているわけにもいきません。
そこで登場するのが広葉樹です。サクラは20年もすれば大木になり材木として出荷することができたそうです。今ではキャンプ用品売り場に燻製用のチップとしても売られていますね。カシやナラも細くても用途があるので重宝されました。同じくドングリをつけるクヌギ、これは榾木(ホダギ、キノコ栽培の原木)がイメージしやすいですね。クリは大きくなれば材木としてはもちろん、その間にも実を売ることが出来ます。(桃栗三年などといわれますが、本格的に実をつけるのは7~10年ほどだそうで)針葉樹も大きくなるにつれ間伐することで段階的な収益はありますが、それと合わせて収益を上げ続けるために様々な種類の広葉樹が利用されてきました。
さてさて、話のフォーカスを天竜美林に戻すと。
繰り返しになりますがスギ・ヒノキは公的な管理や維持がされていますが、上記の広葉樹については手厚いバックアップがついているとは言えない状況です。とある山主さんはせっかく大木に育ったサクラを、細くても良いはずのキノコの榾木にしています。材木として売れないならばせめてとのことでしたが、良質の材木がただただ朽ち木になっていくのは大変惜しい。
そんなこんなで、もし良ければ材木として売ってくれませんか?と申し出たのが5年ほど前。切り倒したばかりのサクラを現地まで見に行き、山の麓で賃挽き(持ち込み材を引き割ってくれる製材屋さん)して、当工房の林場(リンバ。材木を保管するところ)に立てた状態で保管してきました。
先日、そろそろ材木として使えるかな?と試しに少し挽き割ってみました。
手に持っているのが製材後、角材にしたサクラ。思ったほど狂いも少なく、小さな家具などには十分使えそうです。角材が乗っている皮付きの長い板が製材前のサクラの平板です。
画像では分かりにくいですが、実際はもう少し花びらの色を思わせるピンク系の褐色です。
里山や林業の合間に植えられた広葉樹。材木としての可能性を秘めたままスポットライトが当たっていないのは地元民としても悔しい気がします。スギ・ヒノキとはまた異なる特徴をもったこの広葉樹たちの使い道を考えてみたいと思います。近々、このサクラで何か作るかも???お楽しみに~。
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